漢方医学と中医学、韓医学。
世の中には、結構混同している人も多いのではないでしょうか?
実はこの3つは違うもので、成り立った背景や治療に対する考え方、治療法まで異なります。
この記事では、漢方医学、中医学、韓医学の違いを解説します。
漢方医学とは?
結論から言うと、「中医学と韓医学が融合し、日本で独自に発展を遂げた医学」が漢方医学です。
日本では古くから「和方」と呼ばれる治療法があり、そこに中医学と韓医学の良い部分を取り入れ、漢方医学として発展を続けています。
東洋医学には、中医学や韓医学だけでなく、インドのアーユルヴェーダやチベット医学など、さまざまなものがあります。
漢方医学を中国のものだと思っている人も多いですが、実は漢方医学は日本の東洋医学なのです。
また、漢方医学の代表的な治療法は名前が表す通り「漢方薬」ですが、漢方医学では「鍼灸」や「按摩(あんま)」、「指圧」など、さまざまな治療法があります。
自分で健康を管理する”セルフメデュケーション”の時代だからこそ、薬局でも購入できる「漢方薬」をはじめとした漢方医学は、現代人にマッチした医学と言えるでしょう。
中医学と韓医学の違い
似ているようで違う「中医学」と「韓医学」。
その成り立ちには諸説ありますが、医学としての成立が早かったのは中医学と言われています。
中医学と韓医学が日本にわたり「漢方医学」となったように、中医学が朝鮮半島にわたり、独自に発展したものが「韓医学」です。
当時、西洋医学との区別をするため、日本で漢方医学という言葉が生まれたように、中国や韓国では、独自の医学を「中医学」「韓医学」と呼び区別しました。
漢方医学、中医学、韓医学は、源流が同じため共通点がとても多いですが、全く違う点もあります。
それぞれの国が、それぞれの国の人に合った治療法を研究し続けた結果が、今の医学の基礎となっているのです。
漢方医学・韓医学・中医学の違い早見表
項目 | 漢方医学 | 韓医学 | 中医学 |
---|---|---|---|
教育 | 専門大学なし | 専門大学あり | 専門大学あり |
治療の対象 | 未病治療
病気治療 |
病気治療 | 病気治療 |
治療の基礎 | 陰陽(自律神経のバランス)や虚実(体質の強さ)を中心とした実用的医療 | 実用性と医学的理論双方を重んじる | 陰陽と五行をもとに、医学的理論で病気を分析 |
治療方法 | 漢方薬は必要最小限の量を使う。
鍼治療は、細い鍼を浅く多く刺す。 |
薬の使用料は中等度。長く煎じる
鍼治療は、やや太い鍼を深く刺す |
薬の使用量は多めで、長く深く煎じる。
鍼治療は、太い鍼を深く刺す |
薬の組み合わせ | むやみに組み合わせない | 場合によって組み合わせ | 一人ひとりに異なった組み合わせ |
使われる薬 | エキス剤など近代的な薬が主流 | エキス剤と煎じ薬 | 煎じ薬が中心 |
医師資格 | 漢方薬はすべての医師、薬剤師が扱える
鍼灸は鍼灸師が担当 |
韓医学・西洋医学で免許が別
鍼灸は韓医師が行う |
中医学・西洋医学で免許が別
鍼灸は中医師が行う |
上の表には、漢方医学・韓医学・中医学の違いをまとめました。
3つの医学において、
- 生薬をブレンドした煎じ薬を主に使用
- 鍼灸などの手技治療も行う
という共通点はありますが、細かい部分で違うことが分かります。
漢方医学では、薬の量は最小限、方剤は組み合わせすぎない、など、「過剰な治療による体への負担」を重んじていますが、中医学では薬の量を多くし、方剤の組み合わせも一人一人違うなど、「個人により合わせた治療」を重んじています。
イメージでいうと、両者の間をとったのが韓医学、という形です。
日本人は、薬に対する抵抗力もさほど強くないため、それに合わせた形で漢方医学も発展していったと考えられています。
漢方医学は日本人の体質に合わせた医学
もともとは、オランダから伝来したオランダ医学=西洋医学と区別するために名前をつけられた「漢方医学」。
たくさんの薬を処方するわけではない漢方医学は、効果が出るまでに時間が必要なこともあります。
しかし、日本人に合わせて発展を続けてきた漢方医学は、西洋医学のほか、中医学や韓医学に劣っているというわけではありません。
病気になる前から体調を整え、体に負担を極力かけずに体の正常化を目指す漢方医学は、睡眠不足や運動不足など、さまざまなストレスに悩む現代人の強い味方です。