何故加齢で胃腸の調子が悪くなり易いのでしょうか?

何故加齢で胃腸の調子が悪くなり易いのでしょうか?

何故加齢で胃腸の調子が悪くなり易いのでしょうか?

加齢とともに起こる胃腸の衰え

加齢とともに、様々な身体的・精神的な衰えを感じてきます。
「足腰が弱くなった」「寝つきが悪くなった」「物忘れが増えた」・・・など、個人差はありますが何かしら感じている方がほとんどです。

ここで注目してもらいたいのは、加齢に伴う胃腸症状です。主な症状としては、下記のようにいくつかあります。
こんな症状ありませんか?

□これまでと同じ食事量でも胃もたれしやすくなった

□すぐにお腹がいっぱいになる

□すっきり便が出にくく便秘になりやすい

□以前より食が細くなった

□食事量は同じなのに体重が増えやすい

□炭水化物の摂取が多くなっている

これらの症状に当てはまる方は、加齢による胃腸の働きの低下が原因の胃腸不調だと考えられます。加齢とともに自然と胃腸の働きは弱まるため、検査で異常がなくとも胃腸の不快な症状が現れやすくなります。

加齢にともない体質的に胃腸も弱くなる

東洋医学的な考え方では、加齢により体質的に丈夫で疲れにくい「実証」タイプから、体質的に弱く疲れやすい「虚証」タイプへと変化していくと考えられています。そのため、胃腸の機能も加齢とともに変化するため胃腸の働きが弱くなってきます。また、胃腸は日々のエネルギー(気)をつくり出すと考えられていますが、胃腸の機能が弱くなると、エネルギー(気)が減少し、これも老化につながるとされています。

東洋医学で考える「加齢と胃腸」

東洋医学では、人の体を5つの機能に分け、それを1つのつながりとしてみていきます。五臓の中でも「脾」(胃腸)は、老化に関係する「腎」にも深く関係があるとされ、胃腸の不調を放置していると老化が加速するとも考えられます。
五臓はそれぞれがバラバラに機能しているのではなく、相互に関係を持ちながら働いています。

高齢者の胃や腸の老化

胃は、加齢により粘膜が萎縮することで、胃酸分泌が低下し、病原体などに対しての抵抗力が低下します。鉄やビタミンの吸収能力も低下します。

また、加齢によって胃の弾力性も低下するため、一度に大量の食べ物を胃にためておくことができなくなります。

さらに、蠕動運動が弱まるため、小腸へ食べ物を運ぶ能力も低下します。つまり、たくさん食べていないように思っても、胃の中に食物がたまってしまい、胃が苦しくなるという症状がみられるようになります。
小腸は、消化液を分泌する能力が低下し、消化吸収が悪くなります。脂っこいものがあまり食べられなくなったり、乳製品の消化吸収能力が衰えます。

大腸は、蠕動運動の低下や、肛門にある筋肉の収縮力の低下、腹圧の低下などが起こります。
これらの様々な要因によって、「すっきりしない」「固い便が出る」など、便秘の症状が出ることが多いようです。

特別養護老人ホームに入居している高齢者の約36%が毎日下剤を使用しているというデータもあります。(※特別養護老人ホームにおける入所者の重度化に伴う効果的な排泄ケアのあり方に関する調査研究事業:厚生労働省)

肝臓は、飲酒やストレス、薬の影響により日々ダメージを受けています。加齢とともに受けたダメージを修復する能力が衰える傾向にあります。
また、胆石を持つ人も増えることがわかっており、胆のう炎などをおこすことも加齢とともに増えてきます。

加齢とともにおこる胃腸症状の予防とは?

誰にでもおこる加齢ですが、胃腸症状がおこらないようにするには、どのような方法があるのでしょうか?いくつがご紹介してみましょう。

□炭水化物を先に食べない

炭水化物を先に食べると、お腹がいっぱいになりやすくなるだけでなく、血糖値の急上昇などにも注意が必要です。偏った食べ方はよくありませんが、会席コース料理の食べる料理をイメージし、魚やお肉料理、副菜類を優先し、合間に炭水化物を食べるようにしましょう。

□「ちょこっと寝」で胃腸の回復

質のよい睡眠は胃腸の働きを回復させる効果もあります。日中のお昼寝は30分以内程度におさえて、夜に質の良い睡眠が出来るようにしましょう。

□運動はほどほどに取り入れる

東洋医学では、五臓の「脾」は筋肉と胃腸の働きに関係しており、加齢にともない胃腸の働きが弱ると、筋力の低下につながると考えられています。無理な運動をするのではなく、筋力と胃腸の両方に良い効果があるように適度な運動をおすすめします。

◇◇こんな生薬があります◇◇

古来より、胃腸の不調に対して処方されてきた生薬が多数あります。
いくつかご紹介したいと思います。

●「熊(ゆう)胆(たん)」「牛(ぎゅう)胆(たん)」

高齢になると胃腸の働きが悪くなり、胆汁酸が出にくくなることで、脂っこいものなどが消化できなくなり、胃もたれ等になり易い。

熊胆や牛胆には、肝臓の働きを高め、胆汁酸を分泌し易くすることで、消化を助ける効果があります。

また、高齢になるとコレストトロール値があがる方が多いですが、胆汁酸の分泌促進はコレステロールの排出を助ける働きがあります。

この2つの生薬は胆のうを乾燥させて作った動物性生薬です。主な薬効は、健胃・胆汁分泌作用と言われています。古来から、消化器全般の万能薬として用いてきた歴史があり、現在でも貴重な動物性生薬として珍重されています。熊胆の主成分(ウルソデオキシコール酸)は、医療の現場において慢性肝疾患における肝機能を改善することがわかり、治療にも効果を発揮しています。
作用をまとめてみました。

1)肝細胞を保護します

2)栄養素の吸収を高めます

3)利胆作用を促進します

肝臓の働きを高め、胆汁酸の分泌量を増やします。

4)消化不良を改善させます

消化酵素の働きを助け、脂肪の吸収を促進します。

また、加齢とともにコレステロール値が高くなることがあります。熊胆(ウルソデオキシコール酸)には、コレステロールの排出を促す効果が期待されるため、加齢とともに悩む胃腸の衰えにはおススメです。

●「紅参(こうじん)」

胃腸は冷えると働きが悪くなります。紅参(こうじん)には胃腸を温める作用が効果があります。

高麗人参と聞くとわかる方もいらっしゃるかと思います。コウジンは古来から、疲労回復・食欲不振・血行不良などの改善に使用されてきました。

生薬としての薬用部分は<根>で、通常は6年がかりで栽培し、根を蒸してから干したものを紅参(コウジン)と呼びます。
主な働きとしては、ストレスや病気に対する抵抗力を高めます。

そのため、ストレスによる胃腸虚弱や食欲不振、嘔吐、下痢だけでなく病後の回復期や、疲労回復、滋養強壮にも効果が期待されます。

以前は血圧を高める作用があると言われ、高血圧の方は使用を控えるべきと言われてきました。しかし、有用成分であるジンセノサイドには血圧を安定させる作用があることがわかってきており、低血圧症の方だけでなく、高血圧症の方でも血圧の安定が期待されます。

高麗人蔘の歴史は古く、約2,000年前の中国の薬学書「神農本草経」にその薬効が記載されています。中国では大昔から一番効く「不老長寿の薬」として用いられ、王侯貴族の求める貴重品として珍重されてきました。

高麗人蔘はウコギ科に属する多年草植物であり、学名「Panax ginseng C.A. Meyer」といい「すべての病気を治療する」という意味です。
産地は主に韓国、中国、日本ですが、寒冷で降水量が少なく水はけの良い土地が適しており、韓国は気候や風土とともに最適な環境といわれています。
高麗人蔘は加工法により「紅蔘と白蔘(はくじん)」に分類されますが、6年根高麗紅蔘こそ高麗人蔘の中でも最高級品と評価されています。

高麗人蔘は加工法によって大きく「紅蔘」と「白蔘」に分けられますが、高麗人蔘の主成分は人蔘本体よりも皮やヒゲに多く含まれ、蒸すと赤くなることで「紅蔘」という名称が付きました。薬効の中心であるサポニンの種類や量も増えることから薬用価値が高くなります。

●「当薬(センブリ)」

センブリは日本で独自に開発された数少ない生薬の一つです。とても苦く、この苦味成分により、胆汁・膵液・唾液の分泌を促進することが報告されています。

その為、食欲増進や胃液分泌促進、胃機能増進として使用されることがあります。

また、胃潰瘍や胃の病気の原因菌であるピロリ菌に対しても殺菌効果があることがわかってきています。

その他、皮膚末梢血管の血液量を増加させ、皮膚温度を上昇させる作用があり育毛効果が期待されています。センブリエキス入りの育毛剤が製品化され販売されています。

●「黄柏(おうばく)」

ミカン科のキハダの樹皮で、古くから苦味健胃、整腸薬として使用されてきました。

名前の由来として、その皮の色が黄色いことから名付けられており、その黄色はベルベリンという成分です。

このベルベリンには高い抗菌作用があることがわかっており、チフス菌やコレラ菌に対しても殺菌作用があります。

また、胃腸薬とする以外にその中に含まれる粘液性物質を生かして、外傷に用いたり、打撲傷や関節痛などにも外用しています。

●「甘(かん)草(ぞう)」

カンゾウは諸薬を調和する薬として、漢方処方の中で最も多用されている生薬であり、漢方処方の約70%に配合されています。

主成分であるグリチルリチンは肝臓の薬として製剤化されています。働きとしては、肝臓で有害な物質と結合し体外に排泄することが出来るため、解毒作用を持つと言われています。その為、肝臓を保護する物質として薬になっているのです。

また、抗炎症作用に注目が集まっています。消化性潰瘍に対し、カンゾウを含む薬により快方に向かったとの報告がされています。

その他、消化性潰瘍の治癒に対しての効果や、鎮咳・去痰作用など多くの効果が報告されています。

医薬品以外にも、砂糖の150倍とも言われる甘さがあるため、醤油やお菓子・煙草などの甘味料・嗜好品として多くの食品などに使われています。

近年、メタボリックシンドロームや生活習慣病の増加にともない、人工甘味料の使用が懸念されている中で、カンゾウのような天然甘味料がますます脚光を浴びてきています。

●「桂皮(けいひ)」

ケイヒという名前を初めて聞いた方でも、別名(シナモン)は多くの方が知っているかと思います。

香りが特徴的な香辛料です。生薬としての特性は、停滞しているものを動かし発散させる作用を持つと言われています。

東洋医学では「気」の停滞を動かすことにより、水分・血液などの停滞しているものを動かし、むくみ解消や血行不良の改善に繋がっていると考えられています。その為、頭痛やのぼせ感などにケイヒを含む漢方薬が処方されることがあります。

また、体を温めて新陳代謝を促進する作用もあることから、冷え性の改善などにも使用されています。最近では、血糖値を下げることに注目が集まっており、糖尿病の治療薬としての研究も進んでいます。

高齢者の胃腸の衰えには、様々な要因があります。

加齢とともにおこる胃腸症状の予防に記載されているような生活・食習慣の改善や、上記にご紹介した生薬を試してみることも方法であると考えられます。元気に100歳まで!を目標に、健康維持にまずは胃腸の衰えの予防をしてみましょう!

 

 

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